南の島から


update 09 08/16

西表、船浦港上陸

顔がニマニマしてくる、頬が自然と緩んでしまう。
なんちゅう締まりのない顔しとんのじゃ、加藤が大声を出した。
第三住吉丸はようやく西表の北岸に差し掛かったところ。

昨秋、私と加藤は同じ店でバイトしていた、そのバイト先。
ある夕方、バイトの同僚が我々を呼びに来た。
オイ、変な奴が店の中を覘いとるで、お前らの連れちゃうのんか?
ウィンドーに手をついて、店の中に向かってニマニマして居るのは、チャリンコのアンちゃんであった。
伸びた坊主頭、陽に焼けた顔、しまらない口髭、
これでニマニマしていたら、確かに変な奴である。
が、なぜ、
同僚は我々の連れだと思ったのか?

私は完全に沖縄フリークになっていて、
本屋に行って本の背表紙、週刊誌の表紙を見ても、新聞を読んでいても、
そこに、「オ」から始まるフォーレターワードを見つけると、ニマニマしていた。
「オ○○○」に、ニマニマで反応してしまう。
京都、大阪方面で盛んに口にされる同義語の「オ○○」には反応しない。
バイト中も、突然目の前にリーフの景色が広がって見えることがあり、
そんな時は当然ニマニマしていたものと思われる。
これじゃニマニマ変態仲間だわな。
じゃ、また、彼はなぜ、
ニマニマしていたのか?
今の私には、西表仲間に会えるのがうれしかったからだと判る。

チャリンコのアンちゃんは、東北出身、日本一周の途中、冬の間暖かい八重山のカンピラ荘で資金稼ぎ。
毎朝、仕事に出かけるまでの間、「目ン無い千鳥」を聞いていた。
夏をどこかで乗り切って、ようやく秋に京都へたどり着いたものと思われる。
私の下宿で三泊、毎日銭湯へ通い、チャリで京都御所へ行き、そこのトイレで排便。
気持ちいいぞ、とのこと。
何か思想的な事があったのかもしれない。
留守の間に私のとっておきのサントリーレッド・大瓶をマーガリンを舐めながら平らげてしまい、
北へ向かった。
無事をと、加藤と二人で祈った、また再会も。

ようやく船浦が見えてきた。
ヒナイサーラの滝は水量豊か、雨が多いのだ。
浚渫水路の関係で、船は少し大回りして港へ向かう。
横断道路は、湾の奥ヒルギ林の手前に姿を現わしている。
なんと、桟橋が大きくなっているではないか。
出迎えの車の中には、カンピラ荘の山猫バスが見当たらない。
出迎えてくれた
目の小さい、あごのしゃくれた大阪の人が、カンピラ荘のヘルパーらしい。
彼の案内でハイエースロングに乗った。





2月22日







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